「創造交差点」をコンセプトに、多様な人や文化、ビジネスが出会い、新しい価値を生み出す都市空間を目指しています。
異なる領域が交差し、新たなアイデアや技術、文化が生まれる。
私たちは、その思想を空間に流れる音楽でも表現したいと考えました。
サウンドデザインが目指したのは、単なるBGMではありません。
人と人、店舗と共用空間、都市と自然をゆるやかにつなぎ、新しい創造が生まれるための環境づくりです。
館内では、「共用ゾーンの音楽」と「店舗の音楽」が隣り合う場面が数多く存在します。
独立した音環境が互いに干渉し、空間全体の心地よさを損なう可能性がある事から、共用空間を一種の「音のバッファー」として設計。
パブリックスペースが店舗同士をやわらかくつなぎ、建築空間全体をひとつのサウンドスケープとして機能させることを目指しました。
音楽のコンテンツでは、福岡という街が持つ個性にも着目しています。
福岡らしさを音楽に交差させて、ONE FUKUOKA BLDG.ならではの空気感を創り上げています。
音楽制作を手掛けたのは、音楽家・糸山晃司氏。
ピアノやシンセサイザー、室内楽、電子音響、フィールドレコーディングを横断する独自の表現で、映画や建築空間の音楽を数多く手掛けています。
その繊細で現代的な音楽性は、「創造交差点」というコンセプトと響き合い、都市の鼓動と人々の営みを静かにつなぐサウンドデザインを実現しました。
「都市の音風景(Urban Soundscape)」をつくりだした新しい取り組みです。
杉能舎 「巡環の音」
糸島の地で150年以上にわたり酒を醸し続ける酒蔵、杉能舎。
その酒造りは、脊振山系の清らかな水、里山の恵み、土地に暮らす人々の営み、そして代々受け継がれる職人の技によって育まれてきました。
私たちが酒蔵レストランのために掲げたサウンドデザインのテーマは、「巡環の音」。
酒は、水から始まります。
私たちは、酒蔵の水脈をたどり、脊振山系の源流へ向かいました。
山の静寂、森を渡る風、小川のせせらぎ。糸島の里山を流れた水が、大地へと染み込み、地下水脈となって酒蔵へと辿り着く、その循環を音として記録しました。
酒蔵の目の前には、古くから地域を見守る八坂神社が鎮座しています。
神社の鐘の音や境内の空気。酒と神事は、日本の暮らしの中で古くから深く結びつき、人々の祈りや祭りとともに受け継がれてきました。
さらに、実際の酒造りの現場にも耳を傾けました。
米を洗う音。仕込みの音。蔵人たちの手仕事の気配。
酒蔵で日々繰り返される営みもまた、この土地を形づくる大切な風景です。
この作品には、楽器による演奏はありません。
脊振の水。糸島の自然。神社の響き。酒蔵の仕事音。
この場所に実在する音だけを素材として構成した、酒蔵と地域の自然が巡環するサウンドコンポジションです。
それは音楽というよりも、この土地が育んできた「酒蔵のノイズ」。
土地の記憶と人の営みが織り重なった、一つの音風景です。
その場で実際に聴きながら現地編集を行いました。その場所にしかない空気。その土地にしかない音。
私たちが目指したのは、地産地消の食や酒と同じように、この土地の自然や文化から生まれた「地産地消の音」。
杉能舎だからこそ生まれた、この場所だけの音作品です。
天神地下街
福岡の暮らしを支える大切な場所です。
ショッピングを楽しむ人々。
通勤や通学の途中に足早に行き交う人々。
市役所や郵便局、銀行へ向かう人。
待ち合わせをする友人や家族。
この地下空間には、福岡で暮らす人々の日常が絶え間なく流れています。
多くの人が行き交う公共通路としての機能と、福岡を代表する商業施設としての賑わい。
その二つが自然に調和するように、時間帯や街の表情に寄り添った音環境をお届けしています。
急ぐ人の足取りを妨げず、買い物を楽しむ時間を彩り、待ち合わせのひとときを心地よく演出する。
そして、福岡という街の記憶の背景に、そっと寄り添う存在でありたいと思っています。
天神地下街は、多くの人にとって「目的地」であると同時に、「通り道」でもあります。
毎日通る場所だからこそ、何気ない日常に豊かさを届けたい。
福岡の暮らしを支える音環境を育んでいくことが、私たちの役割だと考えています。
MARK IS 福岡ももち
「SLOW&RELAX」をコンセプトに、人々の日常に少しだけゆとりをもたらす商業施設です。
海に近い開放感と、都市の洗練された空気感。
その二つが心地よく交わる、この街ならではの時間が流れています。
私たちは、その世界観を音楽で表現したいと考えました。
オールドテイストな楽曲やサーフロック、AOR、そしてアーバンなエッセンスを織り交ぜながら、
MARK IS 福岡ももちのためだけの音楽を構成しています。
さらに、この空間には、浜辺の街に流れるローカルラジオのような軽快なDJの声が響きます。
口ずさんでしまうサウンドロゴ。街に寄り添う親しみのあるDJアナウンス。そして、紡がれる選曲。
そのすべてが一つになり、訪れる人の体験を彩っています。
BGMを単なる背景音楽とは考えていません。ブランドが持つ個性や空気感を音で表現し、その場所で過ごした時間そのものを、心地よい記憶として残していくこと。
MARK IS 福岡ももちの音環境には、そんな想いが込められています。
買い物を楽しむ人。家族との休日を過ごす人。映画や食事の前後に、ゆっくりと街を歩く人。
それぞれの時間に寄り添いながら、この場所らしい空気を育んでいく。
福岡の海辺の暮らしと、都市のライフスタイルをつなぐ空間に、私たちは音楽をお届けしています。
ザ ロイヤルパークホテル アイコニック 名古屋
「CHUBUを旅する、唯一無二の時間。本当の日本を識る旅。」
ザ ロイヤルパークホテル アイコニック 名古屋は、中部地方の豊かな文化やものづくりの精神を体感するためのホテルです。
館内には、中部の作家や名工、職人たちによって誂えられた家具や調度品、アート、植栽が随所に散りばめられ、一歩足を踏み入れた瞬間から、この土地ならではの物語が始まります。
私たちは、この世界観を音で表現するため、中部の自然と文化を巡る旅に出ました。
向かった先は、世界遺産・熊野古道 伊勢路。
伊勢から熊野へと続く神秘的な巡礼の道を歩き、その土地に流れる時間や空気、自然の音に耳を澄ませました。
現地で収録した風や水、森の音。
そして、自生する苔や竹が持つ生体電位の波形をメロディへと変換し、この土地だけが持つ生命のリズムを音楽へと紡いでいます。
さらに、尾鷲杉に包まれた森を抜け、「奇跡の清流」と称される銚子川を訪れました。
澄み渡る水の流れを取り込み、ホテル内のサウナ空間のためのオリジナル音楽も制作しています。
館内には、三重県の神木として知られる御山杉を用いた巨大なスピーカーが設置され、その木が育った土地の記憶を宿すかのような音響空間の中で、中部の自然と文化を旅するサウンドスケープを
お楽しみいただけます。
目を閉じると、そこには中部の山々や森、清流、そして悠久の時を超えて受け継がれてきた人々の営みが広がります。
私たちが目指したのは、BGMではなく、このホテルだからこそ体験できる「中部を旅する音の風景」の創造です。
私たちは、音楽・アートイベントへの協賛や企画活動を継続的に行っています。
BGM事業は、空間の価値を高め、マーケティングやブランディングを支える仕事です。
しかし、その根本にあるのは、音楽そのものへの敬意です。
音楽を単なる機能や手段として捉えるだけでは、本質を見失ってしまうのではないか。
音楽の起源には、人々の祈りや願い、自然への畏敬、誰かとつながりたいという想いがありました。
だから私たちが目指すのは、Back Ground Musicではなく、Belonging Ground Music。
人と人。人と土地。人と文化。
それぞれがつながり、自分の居場所を感じるための音です。
音楽によって事業を営む私たちは、文化を享受するだけでなく、生み出される表現をささやかに支え、その価値が未来へ受け継がれていく一助になれればと考えています。
私たちにできることは決して大きくありませんが、音楽やアートの営みに関わり、できる範囲で、その豊かな循環に参加していくことも大切な活動の一つです。
アートや音楽への協賛事業は、その想いを実践するための活動です。音楽を通じて、人と文化の未来をつなぐこと。それもまた、私たちの大切な使命だと考えています。
遠い昔から変わらない、静寂。
陽が落ちた森に、自分の心臓の鼓動が響く。
目を閉じると、周囲は生命の気配に満ちていた。
ただ、そこに居る。
それだけで、自分もまた、この島の自然を構成する一つの生命であることに気づかされる。
目や耳ではない、もっと違う感覚で見る風景。
私たちが得た感覚、それは「琉球の原風景」への入り口だったのだと感じています。
このプロジェクトでは、世界自然遺産に登録された沖縄島北部・やんばる国立公園、そして西表島石垣国立公園を訪れました。
かつて「琉球列島」と呼ばれた時代から変わらない森や海。
その土地に流れる時間を、フィールドレコーディングによって記録しています。
きらめく海と深い森。強烈な陽射しと濃い影。光と影のコントラストの対比の中には、琉球王国の時代から現代まで続く歴史が重なっています。
幾度もの支配や戦争を経験しながらも、この島の自然は変わることなくそこにあり、人々と共にあり続けてきた音。
ホテルの屋外テラスでは、世界自然遺産 やんばる国立公園内の自然音をライブ配信しています。
ありのままの森。天然記念物のヤンバルクイナ。アカヒゲ。リュウキュウアカショウビン。ノグチゲラのドラミング。リュウキュウコノハヅク。
雨や風、虫やカエルたちの声。刻一刻と変化する世界自然遺産の気配を、那覇の街の中心で感じることができます。都市の喧騒を離れ、琉球列島の自然へと心を旅させる試みです。
やんばるの自然音と、琉球古典音楽の精神から着想を得て作品を創作しています。
琉球において音楽は、単なる娯楽ではありませんでした。御嶽(うたき)。ニライカナイ信仰。海や森への畏敬。祭祀としての歌舞音曲。予祝の文化。
私たちは、その伝統音楽の古典楽器奏者と共に一つひとつ、音を丁寧に分解して録音しました。フレーズをほどき、一音と一音の間に余白を生み出しています。
その余白を、変わることのないやんばるのサウンドスケープが静かに包み込みます。
音楽と自然音。その境界に生まれる静かな空白。聞く人が自由に想像し、それぞれの心の中に祈りや感謝、美しい風景を見出すことのできる音空間を目指しました。
私たちが表現したかったのは、沖縄の観光地としての風景ではありません。
古くから受け継がれる精神性、祈りと感謝に「琉球の原風景」を見たのです。
ホテルを訪れる方々が、目に映る景色だけではなく、心の中に広がる美しい風景と出会うこと。
その旅路に寄り添うことが、このサウンドデザインの願いです。
SHIP's GARDEN
都市の喧騒と、水辺の時間をつなぐ音環境。
SHIP's GARDENは、都心にありながら、水辺の開放感を感じられるパブリックスペースです。
目の前を走る明治通りからは、絶えず車の走行音や街の賑わいが聞こえてきます。
私たちは、この場所における音楽の役割を、「音の緩衝材」として考えました。
実際には、騒音を覆い隠すというよりも、街の音と共存しながら、人が心地よく過ごせる空気をつくっている事に、大切な事を気づかされたのです。
友人との語らい。仕事帰りのひととき。ヨガを楽しむ時間。踊っている人がいたり、一人で静かに過ごしたり様々。
街の音を消すのではなく、街と人をつなぐ音環境。
人の過ごし方を受け止めながら、音楽は主役になることなく、その場にそっと寄り添います。
那珂川を渡る風や、水辺の景色のように。環境に自然と溶け込み、この場所を訪れる一人ひとりの時間をやさしくつないでいきます。
公園やパブリックスペースに、音響設備やBGMが導入される事例は決して多くありません。
しかし、この場所には、開業の日だけでなく、これから人々の暮らしや思い出が育まれていく場所であってほしいという願いが込められています。
その営みの一つとして存在できることに、じんわりと誇らしさを感じます。
居心地の良い場所をつくること。そして、その場所と人、人と人をゆるやかにつなぐこと。それもまた、音楽が持つ魅力だと考えています。
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福岡県知事 許可(般ー4)第111262号